然別湖コタン アイスダイビング 2015【前編】
2015年2月14日、15日
今年で3回目となる、北海道,然別湖でのアイスダイビングを開催致しました。
ここまで、安全に実施できているのも、然別湖ネイチャーセンターさんのご協力、そして、参加いただいております皆様のご理解あっての賜物です。
はじめに、感謝を込めて、スタッフ一同、お礼申し上げます。
ポセイドンでは長らく、頭上に障害物があり、緊急浮上できない状況下でのツアーは禁止していました。
したがって、アイスダイビングも、流氷ダイビングも、長い期間、開催していませんでした。
創業者である、橋 金作 相談役 (NAUI #3523) からの視点では、業界内での氷下潜水で、多くの潜水事故を目の当たりにしてきた事実があり、参加者もスタッフも、かなりのハイリスクを負うことを考えた時、開催しないほうが良いという決断となっておりました。
では、何故、今ポセイドンでは、
アイスダイビングを開催しているのだろうか?
それは、二つの理由があり、このブログで明らかにしたいと思います。
理由その1:継続トレーニングの必要性と安易な考えへの警鐘
流氷ダイビング、湖でのアイスダイビング、ともに高い達成感と感動を得ることができます。もちろん、これらを行う際、主催する業者は、安全に細心の注意を払っています。
しかしながら、結局のところ、安全はご自身で確保しなければならない現実があります。お金で、安全へ向けたトレーニング機会は得られますが、ご自身のトレーニング抜きに、安全だけを得ることはできません。
アイスダイビング、流氷ダイビングには、以下の内容が複合的に重なり合う、特殊な環境であることをイメージください。
・コールドウォーター環境(湖は1℃〜0.5℃、海は4℃〜-1.5℃)
・オーバーヘッド環境(出入り口は1箇所のみ)
・ライン潜水(モールス的信号であり、絡まることも考えられる)
・ 低視界環境(光の届く範囲、またシルトの巻き上げなど)
・高所域環境(湖の場合は、高所もありうる)
これらは、単体でもスペシャルティになり得る内容です。
コールドウォーターでは、もちろん寒い中での活動なので、血管を収縮させ、血圧が上がり、狭心症や心筋梗塞などのリスクが高まります。
また、準備する器材も、寒冷地用レギュレーター、ドライスーツ、インナースーツ等、夏の装備とは違い、重装備になります。それらを十分理解し使いこなせなければ、活動が困難になります。
そして、なにより、夏以上に重労働となります。
レギュレーターの凍結は、とても厄介な問題です。
水中で、レギュレーターの凍結は、空気供給が突然止まることは基本的にありませんが、例外もあるようです。
また、氷などが頭上にある場合、垂直には浮上できないので、ライン(ガイドロープでもあります)を頼りに戻ります。
このとき、ラインを監視し、さばく役割の「テンダー/監視者」とのラインコミュニケーションがうまくできていない場合は、最悪の事態を引き起こす可能性があります。
仮に、パックアイスや、部分氷結の場合でも、頭上に障害物があることには変わりがありませんので、油断できません。
テンダーとバディとの連絡、またガイドロープとしても利用するラインは、とても重要です。
これといった方法が決まっているものではありませんが、どれもメリットデメリットがあり、それを理解し、ロープを持っている方向を意識しながら方向転換や姿勢制御を行います。
失敗すると、動き回る分ロープが絡まり、その力でシルトが巻き上がり、低視界、低水温、出口は一つ、レギュレーターの凍結の恐れもある中で、水中拘束と言うことも十分起こり得るのです。
こう書くと、非常に恐ろしいと思われるかもしれませんが、事実を隠し、安易にお誘いすることの方が危険だと、私は思っています。
誰しも、参加する権利を有しているわけではないのです。
健康状態が良好に維持されており、リスクを受け入れ、必要なスキルを身に付けるために、知識、技術、姿勢を継続的に高めているダイバーのみ、参加する権利を有しているのです。
このように、エクストリームな活動ですが、これをキッカケに、間接的にでも健康維持につながり、知的好奇心を満たし、生活が充実することは、ダイビングの本分だと思うのです。
なので、その本分を提供していく意味で、限定的な開催および集客ではありますが、アイスダイビングを開催させていただいている次第です。
極論で言うと、ダイビングトレーニングは、潜水で生還するために行うもので、目的に合わせ段階的に、
・知識
・技術
・安全に対する姿勢
・経験
を向上させるようにプログラムされています。
ですが、免許のような扱いで、資格主義として行われては困ります。
カードを持てば、そこでゴールではありません。
経験を積んでいても、その年月と反比例して体力などは減少いたしますから、常に現状でどこまでできるのかを継続的に追求しなければいけないものでもあるのです。
この氷の下の世界は、どうなっているのだろう?
果たして、この環境の中、ダイビングはできるのだろうか?
このような、素朴な疑問であっても、ハードルは意外と多い。しかしながら、そのハードルは超えるやり方があり、その超えるやり方を継続的に維持や向上、トレーニングを行うことで、その疑問は、自身またはチームで解決することができる。それが、感動や達成感につながるから、ダイビングは楽しいのではないでしょうか?
私自身も、慢心してはいけないと肝に銘じ、来年の第4回アイスダイビングへ向け、様々な文献を読みながら、改善を心がけております。
私たちの業務は、以上の件を企画、実施、さらに改善すること、賛同くださる皆様へ参加機会の提供を行うことです。
多くの情報が氾濫する世の中にあって、様々なダイビングアクティビティの楽しい部分が強調され、良く見える時代です。
体験ダイビングでも、スノーケリングでも、スクーバダイビングの最初のコースでも、南国でのダイビングでも、リスクは存在していますから、そのリスクを知り、受け入れ、乗り越えるべきもの、継続的に行うべきものを発見いただき、より豊かなダイビングライフを満喫していただきたいと願っています。
理由その2は、今回のお話の後にある、楽しさについて、次回のブログで書いて参ります。
是非、お付き合いください。
●お写真は、私工藤が撮影したものの他に、今回ご参加いただきました
酒井さんからも提供いただいております。ありがとうございます。
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