潜水業務安全教育講習 フルフェイスマスク編


 PADIさんでは昨年、
 フルフェイスマスクスペシャルティコースが、
 開始されました。

 我がNAUIでは、アメリカなどでは実施されていますが、
 日本では今後実施するかもしれない、
 と、いう事なのでしょうか。期待しています。

 ところで、
 フルフェイスマスクは普通に販売されていますが、
 使用に関して、色々気をつけなければならないことや、
 トレーニングも必要となり、それらを専門的に
 情報提供しているスクールが少ないことは問題です。

 フルフェイスマスクは、メリットもあれば、
 もちろんデメリットもあるのです。

 NAUIフルフェイスマスクSPLはこれからの話なので、
 我がポセイドンでは、保険等の問題をクリアするためにも、
 安全衛生教育講習(勤務扱い)として、
 法人向けのトレーニングを実施しています。

 昨年末に、とある機関より、
 潜水業務中に回虫の経口感染を防止するため、
 フルフェイスマスクでの作業を行いたいとのご依頼があり、
 そのトレーニングを担当させていただきました。

法人向けフルフェイスマスク講習中

●フルフェイスマスクの種類と運用

フルフェイスマスクは全面マスクと訳される事もあり、
 セカンドステージが、顔全面を覆うマスクに取り付けられたものです。

 メリットとしては、
 ・マウスピースを咥えていないので、通話装置などで会話ができる。
 ・顔全体が覆われているので、顔が冷たく感じづらい。
 
 様々なタイプがあり、
 頭や顔を防護する必要がある場所や、汚染水域で活用される、
 「ハードハット(ヘルメット型のもの)」
 顔全面だけ防護する「バンドマスク」や、
  
左がバンドマスクで右がハードハット

 
 下の写真のように、セカンドステージと一体的に設計された、
 一般的な「フルフェイスマスク」、

世界で使用される made in shitamaci ダイブウエイズのマスク

ポピュラーなOTS社フルフェイスマスクとロゴシーズ

耳抜きはノーズパッドに鼻を押し付けて行う


 更には、マスクとセカンドステージが別売の
 「簡易的なフルフェイスマスク」などがあります。

手元にあるレギュレーターにセットできるのがメリット

 マスクが大きい=死腔も大きいのでは?
 と、言う疑問を持たれることがありますが、
 どのマスクにも、オーラルネーザルマスクが装備され、
 マスク内の死腔を最小にし、二酸化炭素の蓄積を防いでいます。

 通話装置は、有線、無線とありますが、
 写真のように、トランシーバータイプも便利です。

ロゴシーズを装着

 ポセイドンは、ロゴシーズ販売店で、
 講習会や認定コースもございます。

 一見便利そうなフルフェイスマスク。
 しかしながら、デメリットを理解しなければなりません。

 デメリットとしては、
 ・顔に合っていなければ使いづらい
 ・機能が多くなれば、その分熟知が必要
 ・エアの消費が大きい
 ・機種によってはフローしやすい
 ・予備のマスクが必要
 など、そのリスクを抑えるためには、
 やはりトレーニングが必要となります。


●トレーニング内容

トレーニングは、取り扱い方、手入れ方法はもちろん、
 ・マスクやレギュレーターに不具合が合った場合
 ・エア切れを起こし、バディにオクトパスを借りる場合
 この2点がメインのトレーニングとなります。

 マスク自身のトラブルは、エアが供給されている限り、
 ほとんどの場合はマスク内の空気が圧力差によりフロー気味
 になるので、よほどのことがない限り、浸水は少ないです。

 しかしながら、セカンドステージの脱落など、
 万が一のトラブルの場合は、浸水するばかりか、
 呼吸もできなくなってしまうことが考えられます。

 したがって、予備のセカンドステージ(右出し)と、
 予備のマスクに交換するトレーニングは必要となります。
 ※下は画質は悪いですが、トレーニング風景です。


 また、空気消費の大きいフルフェイスマスクですから、
 エア切れも考えておかなければなりません。
 バディからオクトパスを借りる方法もトレーニングが必要です。



●装着感はどうなのか?

先にも書きましたように、装着方法が誤ってしまうと、
 使いづらいものになります。
 
 また、製品と顔の相性ですが、
 耳抜きの際の鼻押さえに合う合わないがあります。

 海外製品は、顔の幅が合わないこともあります。
 こめかみ辺りが、痛くなることも。

 あと、自然とフィッティングの微調整をしているのか、
 顎が疲れることがあります。(個人差はあります)

 大切なことは、
 これらにより潜水中にストレスが高まらないように、
 業務と使用者に最適なマスクを選ぶこと、
 そして、正しい装着を行えるように準備することです。

 導入時、そして定期的なトレーニングを。
 
安全衛生講習中

こちらも講習中

●全面マスク式潜水?

最後に、ちょっと疑問に思うことを書きます。
 
 今回は、スクーバ式潜水で、
 フルフェイスマスク(全面マスク)を使用することを書きました。

 このデマンド式の圧力調整器の根元が、
 コンプレッサーであれば、デマンド(応需)送気式で、
 ファーストステージとタンクであればスクーバ式になります。
 ※高気圧作業安全衛生規則第30条にスクーバ用の圧力調整器が
  規定されていますので、第30条の圧力調整器とも呼ばれます。

 違いはタンクなのか、コンプレッサーなのかの違いです。
 そこから先は、セカンドステージを咥えるか、
 フルフェイスマスクを装着するかの事なのですが。

 定量送気式であれば、ほとんどがヘルメット型潜水器をかぶります。
 なので、定量送気式=ヘルメット式潜水方式
 としても問題はありません。

 なので、潜水士のテキストおよび試験は、
 そのどちらかで記載されています。

 疑問は、、、潜水士テキストでは、
 応需送気式=全面マスク式潜水方式
 としてしまう書き方になっている事です。

 圧力差で作動するデマンドバルブを使用する、
 応需送気式は、スクーバダイビングと同じ、
 セカンドステージを使用しています。

 普通に咥える場合もあれば、
 フルフェイスを装着することもあります。

 ちなみに、昔は応需送気式を、
 フーカー式潜水と呼んでいたこともあります。
 と、言うより、今もそのように呼んでいることが多いです。

 フーカーとは中東の水タバコのことで、
 エジプト語ではシーシャとも言います。

 ホースを咥えた簡易的な潜水が、
 水タバコを使用しているようにも見えることから、
 フーカー潜水と呼ばれるようになったようですが、
 そこからデマンド送気式をフーカ式と呼んでしまう事に
 繋がってしまったようです。

 現在の潜水士テキストには、全面マスク式潜水方式は、
 送気式潜水方式の形態の一つと書いてあり、
 また、全面マスク式潜水を「フーカー式」と呼ばれるが、
 簡易的な潜水方式を指す用語であり、国際基準とも合致しないため、
 (全面マスク式をフーカーと呼ぶことを)使用しない方が良い。
 とも書いてあります。

 フーカーについてはそうかもしれませんが、
 それであれば、全面マスク式潜水を、
 デマンド(応需)送気式とするのは、
 いささか、雑なような気がしてなりません。

 ここまで書いた通り、
 自給気式も、全面マスク式があるからです。

 ・定量送気式はヘルメット潜水器を使用する。
 ・応需送気式は圧力調整器、
  またはそれが装置された全面マスクを使用する。
 ・自給気式は第30条の圧力調整器、
  またはそれが装置された全面マスクを使用する。
 
 と、言うようにした方が、よっぽど分かりやすいのですけど。。。

 独り言です。。。(笑)

デマンド送気式の送気チェック

 亜寒帯潜水技術研究所では、
 このように、フルフェイスマスクのトレーニング、
 その他、自給気式だけではなく、
 デマンド送気式潜水器の販売と、
 その使用方法の講習も実施しております。

 講習や器材をご入用の際は、
 是非、お気軽にご相談ください。

 次のBLOG投稿は、
 ブラックアウト(無視界)潜水訓練です。

雅哉君もデモしています

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