コールドウォーターダイビング(第4回目)


 コールドウォーターダイビングについて、
 今回は4回目です。
 一応、シリーズとしては完結しようと思います。

 上の写真は、雪の中のエントリー。
 見ているだけで寒くなるっ
 と、言われてしまいます。

 でも、雪の中を漕いで歩くのは、
 スキーやスノーボードだって、同じです。

 冷たい海に入るのは、
 冬サーフィン、冬SUPだって同じです。

 冬ダイビングを行っても何の不思議もありません。

 快適性は違えども、
 夏だって、潜っていれば体は冷えます。

 しかしながら、
 人間は、何かを判断するために、一般的な認識、予備知識など、
 「先入観」というフィルターを通します。

 そうなると、四季がはっきりしている日本だからこそ、
 冬の海は冷たく、荒れている。
 そう評価、判断するものですね。

 これは正しいものでもあり、
 冬の海で、荒れている時に、無用心にふざけていると
 落水、低体温症、溺れ、遭難、etc

 だから、不用意に近づかなかったりします。

 ただ、言えることは、
 準備を行い、慎重に行動すれば、
 知らなかった発見などが、あったりもするのです。

 なので、冬ダイビングは「探検」なのです。

 陰を知らなければ、陽も知ることはできません。
 夏のダイビングを知るために、
 冬のダイビングも知ってほしいですね。

 また、冬のダイビングを知るために、
 夏のダイビングも知ってほしいです。

 と、いうか、
 春夏秋冬、準備をしてダイビングを行い、
 水中の成り立ち、つながりを見ていただきたいです☆

 
 さて、前置きが長くなりましたが、
 今回はコールドウォーターダイビングの
 注意事項とまとめです。


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◇コールドウォーターダイビングって??(第1回)
◇水で楽しみ、水に悩む。。。(第1回)
◇空気、水、流体って、、、(第2回)
◇コールドウォーターってなに?(第2回)
◇レギュレーターの凍結??(第3回)
◇コールドウォーターで必要な道具の知識(第4回)
◇ハイポサーミア??(第4回)
◇まとめ(第4回)
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◆コールドウォーターで必要な道具の知識


アイスダイビング風景

 前回までで、基礎的なお話でしたが、水の性質(第1回投稿)
 空気の性質(第2回投稿)、レギュレーターの凍結原理(第3回投稿)で、
 お話してきました。

 基礎的といっても、とても複雑で奥深く、
 説明出来る部分だけ、書きました。
 それでも解りづらい内容です。

 上手に説明出来るように、今後も勉強しますので、ご勘弁を。

 さて、それらを基に、寒いところでの器材取り扱いなど、
 書いてみたいと思います☆


・レギュレーターの取り扱い(復習あり)


レギュレーターは雪の上に置かない
 
 前回までで、レギュレーターの凍結原理について書いてきましたが、
 正直、その時の状況次第だということは、付け加えておきます。

 ・雪の上に器材を置いてはいけない理由
  前回、説明すると書いておきながら、答えを書いていませんでした。
  これは、単純に、水分がセカンドステージ内に入り込むからです。

  その水分は、パージを押したり、呼吸したりすると、
  デマンドレバー固定部分の凍結を引き起こし、フリーフローします。

 ・繰り返し潜水の場合は?
  確実に、この場合は、セカンドステージ内が濡れた状態です。
  
 ・と、言うことは?結局どうするの?
  前回同様、セカンドステージの凍結は、濡れていると起こります。
  呼吸をしていれば、必ず呼気の湿気で濡れます。

  よく、呼吸は水に浸かってから行うべきだと言われます。
  これは、外気温よりも温度が高い水中の方がまだ「まし」だからです。

  また、繰り返し潜水にて、セカンドケース内が濡れてしまった場合も、
  同様のことが言えます。水温のほうが、流れる空気より温度が高いのです。
  
  ですから、寒冷地仕様は、(ヒートエクスチェンジャー)
  が装着され、効果的な熱交換を行うわけなのです。

  また、ホースも、金属ほど熱伝導率は高くありませんが、熱は伝わります。
  その証拠として、写真では、ホースも凍結を起こしています。


ホースも表面が凍結し、硬化する。

  そこで、ロングホースのほうが凍結しづらいという話があります。
  私も、寒冷地レギュはロングホースにしています。
  ホースが長い分、熱交換を行う面積が大きくなるということでしょう。


ヒートエクスチェンジャーホースとロングホース


  と、いうことで、結局は、

  1、寒冷地仕様のレギュレーターを使用する
  2、極力、エントリー後、顔を水につけ、呼吸を開始する
    万がいちフリーフローした場合は、タンクバルブを閉じ、
    「お湯」にレギュレーターを浸ける。
  3、ゆっくりと冷水に顔をつけ、慣らす。
  4、呼吸が安定してきたら、潜降を開始する。
  5、水中では、吐くほうをゆっくり長くする。
    ※ふぅ〜っより、はぁ〜 のほうが、良いです。
  6、吸う時も、ゆっくり行う。
  7、水中でフリーフローを起こした場合は、速やかにエギジット。
    そして、バルブを閉じ「お湯」に浸ける。
  8、繰り返し潜水の場合、休憩中は「お湯」にレギュレーターを
    入れておくか、セットする前に「お湯」に浸ける。
  
 ・心構えとして
  カメラを使っているかたは、やはり高額な機器であるとともに、
  想い出や、作品を大切にしたい。なので、機器も大切に扱っています。

  レギュレーターも、その撮影活動を行う上で、かなり重要な機器です。
  ですから、カメラ同様に取り扱って欲しいのです。

  ・前日までに、暖かいところでチェックを行う。
  ・濡れている場合は乾燥させる。
  ・きちんと習って出来る方は、セカンドフェイスを開けて乾燥
  ・上記で更に出来る方は、ホースも外して乾燥
   ※危ないからさせないではなく、出来る範囲なら講習を受けていただき
    分解してみる。と、言うことのほうが大切だと思っています。
  ・乾燥させた器材を暖かいところで落ち着いて組み立て
  ・急激な温度変化を起こさせないように、タオルに包む
  ・さらに、徐々に部屋→廊下→玄関と温度に慣らす。
  ・ダイビング終了後は、以上の逆を行い、そしてまた上から実施


開け閉めは習ってください


 ・最近の寒冷地仕様
  過去から、様々な寒冷地仕様レギュレーターが販売されてきました。
  スプリングチャンバー(環境圧チャンバー)にシリコンオイルを入れたり
  空気の圧力で環境圧と同様の効果を出したものもあります。

  セカンドは、呼気の熱を利用して、凍結部位を凍りづらくしたり、
  部品をテフロン加工したりと、これも様々です。

  ただ、過去のものは、寒冷地と通常のタイプがはっきりしており、
  特にオイル封入タイプは暑いところで漏れてしまったり、
  価格的にも高価だったりし、需要は寒いところで潜るかたオンリー。

  現在は、南国でも寒冷地でも、全く問題なく使用できる、
  ドライシールチャンバーになっていたり、
  寒冷地最高グレードこそ、レギュレーター最高グレードとなりました。 

  深く冷たい水中で、安定的に、必要な流量の呼吸ガスが供給される。
  これがレギュレーター品質の信頼となっているわけです。

  もちろん、使うかたのニーズに合わせてのことですから、
  旅行に特化したものや、素材にこだわった器材もあります。
  僕たちは、亜寒帯湿潤気候の北海道ダイバーですから、

  やっぱり、最高グレードは、寒冷地仕様レギュレーターなんですよ♪
  
寒冷地仕様レギュレーター

   


・BCだって気をつけよう

 気をつけるのは、レギュレーターだけではありません!
 BCの取り扱いも注意しましょう。

 簡単に言うと「レギュレーターと同様に扱う」ことです。

 BC内部には、意外と水が入り込んでいます。
 濡れた状態で、現地到着。

 寒空の下、放置しておいたら、
 「あれ?空気入らない。。。」
 と、言うことも。

 そうです。インフレーター内部の細い空気の通り道。
 簡単に凍結します。

 さらに、場合によっては、

  寒さで硬化している樹脂の耐久性 < 水が凍結して体積が増える

 と言うことで、破損することも考えられなくないです。

 その時に破損していなくても、なんらかのクラック(割れ)が生じ、
 いつの日にか、気づいたら割れていた。。。と言うことも。

 ※某インフレーターのプラグ部分、実際に割れました。

 また、宿泊でのツアーでは要注意!
 ブラダー(袋部分)に水が入ります。これは通常のことです。
 でも、そのまま放置し、車の中に積みっぱなしだと、、

 翌日、全くBCが使えず、結局札幌へ戻るまで氷は融けませんでした。
 なので、こちらも、部屋に持ち込んで、水を抜いてください。


凍結した私のBC


  
・ドライスーツ&インフレーターと、中圧ホース


羅臼でのひとコマ

 まずは、インフレーターの取り扱いはBCと同じです。
 ドライも、寒冷地宿泊ツアーの場合、お部屋に持ち込んでください。
 
 それと、中圧ホースは、雪の上に置いてはいけません。
 この理由は、プラグ部分に雪が入り込み
 インフレーターと接続できなくなるからです。

 お湯につけると治りますが、時間のロスです。

 ドライの凍結は、水中では起こりません。
 陸上では、すごいことになります。

 海水のほうが、まだ凍結しづらいのですが、
 湖の場合は大変ですw
 私たちが良く行く「然別湖」は、マイナス15〜マイナス20度のことも。
 
 凍りやすい淡水ですから、エギジット後、すぐにパリパリです。
 脱ぐ時は、ファスナーにお湯をかけるなどして、落ち着いて脱いでください。



・カメラの取り扱い

 カメラの使用温度については、様々ですから、ここでは置いておきましょう。
 で、コールドウォーターでの注意事項ですが、
 レギュレーターの時にもちらっと書きましたが、

 「急激な温度変化」

 は、絶対に避けましょう。

 急激な温度変化は、カメラ内部、レンズ内部で「結露」を起こします。
 その結果、誤動作や故障ということが発生します。

 なので、使用後に部屋へ持ち込む時、タオルで包んで、
 極力外気との接触を和らげる。

 そして、まずは玄関に置く。

 その後、部屋に入れるなど、段階的に行うと良いです。



・フィンの選び方


スーパートライスター

 フィンは、できるだけゴムフィンのほうが良いと思っています。
 
 最近は、温度変化でも問題ないように、
 サーモプラスティックを使っている製品もありますが、
 やはり、冷たいとプラスティックや樹脂は、硬くなります。

 レギュレーターの凍結を考えると、
 遠出はできないのが、コールドウォーターです。

 湖の場合は、巻き上げず、小回りがきくような泳ぎ方なので、
 ややマイナス、または中性浮力の、ブレードが短めな
 ゴムフィンが良いと思っています。

 中性浮力のフィン、と、言うのも、
 姿勢制御は基本的にトリムで行い、
 フィンキックは、フロッグキックだからです。

 昔はプラスティックも冬に使っていましたが、

 やはり、夏との使用感の違いは感じていました。。

 以下は、主観的なものですが(自分の足がでかいので、、、)

 アクアラング ロケット2またはAPEKS RK3が良いです。
 これは、どちらも同じもので、中性浮力の柔らかいラバーフィンです。
 2016年、ホワイトも出ましたね。 良い感じです。

 それと、ダイブウエイズ スーパートライスターが良いです。
 これは、古くからあるフィンですが、使用している方がたも
 かなりの高評価をしています。

 私としましても、実際使ってみて判断しています。
 ただし、サイズも脚力も皆様と違いますから、
 参考にしてもらえれば良いという感じです。



・フードとグローブ


特別仕様のフード

 グローブも、フードも、基本的なことがあります。
 それは、圧迫感がないことが大切ということです。

 フィッティングがぴったり。
 これは、正直よろしくありません。

 ピッタリしているということは、生地がある程度伸びています。
 戻ろうと力が働きますから、数分後にはキツく、またかじかみます。

 少しゆとりがあるほうが良いです。
 ※がばがばはNGですよっ!

 私は、5mmは使用しません。
 フードは3.5mmです。そのかわり、
 顔の露出を小さくしたものを使用しています。

 グローブは4mmのミトンです。
 5本指で4mm〜5mmは、指の股が痛いです。
 個人差はあるでしょうが、ミトンのほうが断然使いやすいです。

 これらは、マイナス1.5度の羅臼の海でも使っています。
 個人差がありますから、参考まで☆



・オクトパスと予備空気源

 これは、以前書いたブログを参考にしてもらえればOKです。

  オクトパスは右側から?左側から?
 
 オクトパスは、右だしが基本です。
 ただ、オクトパスは予備空気源ではありません。
 空気の予備が必要であれば、ポニーボトルの準備も考えるべきです。
 


 
・ワセリンやホットジェル

 器材とは別に、あったほうが良いものを書いておきます。

 ・ワセリン
  冬のダイビングは、顔がカッサカサになります。
  痛いくらいになりますので、あらかじめ、ワセリンを塗り、
  肌の保護をしておくほうが、良いと思います。

 ・ホットジェル
  これは、インナーを着る前に、体幹に塗ります。
  血行促進になりますし、確かに暖かいです。
  末端に塗るのではなく、基本は「体幹」に塗るんですよ☆

 ・貼るカイロ
  これは、私は使用していません。
  昔のカイロは、水がつくと危ないと言われていましたし、
  密閉状態だと暖かいのか眉唾ものです。
  ですが、使用している方は多いです。
  全然違うよっ!と言われます。 へぇ〜。そうなんだ。。。



・命のお湯

 これは、必ず!
 お湯を準備しましょう!(主催者側の話ですけどね)



◆ハイポサーミア??


真冬の積丹(水中)

真冬の積丹(水面)

 さて、コールドウォーターダイビングでは、器材の凍結のほか、
 低体温症(ハイポサーミア)についても考えなければなりません。

 これは、通常のスクーバ講習でも出てきます。
 詳しくは、今一度、テキストを読んでみてください。

 ですが、コールドウォーターでは、かなり冷えます。
 なので、防止対策をまとめます。

 ・食事をきちんと摂る(潜水2時間前までには食べましょう)
 ・水分も、もちろん摂りましょう
 ・起きたらお湯をゆっくり飲むと内臓の動きが良くなりますよ
 ・潜水前日は良く寝ましょう
 ・インナースーツは、水温や気候に適したものを着ましょう
 ・綿など、汗と結露を吸水する素材はインナーとしてNGです
 ・専用のインナースーツが良いです
 ・インナーのフワフワ感が減ったら、買い替えです
 ・重ね着しすぎないこと
 ・ポイントは、暑からず寒からず、汗をかかない程度です
 ・靴下は高品質のものを
 ・水中で寒くなりすぎたら、無理せずエギジット
 ・濡れたままでいないこと


防水透湿寒冷地ソックス(在庫あります)


 ドライ内部は結露します。
 それを利用し、発熱素材ヒート2000を使用しているものもあります。

 一般的に、結露でインナーは濡れます。またスーツ裏面も濡れます。
 予想以上に濡れますから、専用インナーが必要なのです。

 間違っても「それ水没だよ!お店に文句言いな!」
 と言って、使用者を動揺させないでください。
 結露ですから。。。

 冷たい空気を吸い、体は冷えます。
 また産熱するために、呼吸は増えます。
 乾燥した空気は、体内の水分を奪います。

 コールドウォーターダイビングは、
 窒素を取り込みやすい体になってしまいます。

 また、空気の消費も早いので、決して無理はできません。

 総合的に考えると、
 コールドウォーターでは、
 今まで説明してきた内容から、行動範囲を考えなければならないのです。



◆まとめ


然別湖の水中から

 最近では、汗を発散する透湿素材のシェルドライも販売されています。
 ですが、その耐久性は未知です。
 使ってみましたが、陸上で長時間着ていると、確かに発散されています。

 素材も含め、技術は発展しています。

 更に発展し、将来的には、
 流体が流れるホース自体が安全な範囲で発熱するとか、
 全く今までと違った構造のものが出来るとか、

 面白いですよね☆

 ダイビングは「冒険」でした。
 そして、水中環境のことがわかってきても「探険」です。

 みなさんには「探険」ではなく、
 「探検」を、私たちは提供しなければなりません。

 
 コールドウォーターダイビング
 ブログに書いたことが全てではありませんし、
 環境によっては、違った方法があるとも思います。

 その中で、一つの方法論だと考えていただき、
 ご参考になさっていただければ幸いです。

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