潜水作業の安全衛生教育 1706 Safety and Health Education of the Diving Operation
ポセイドンの中には、北海道という地域特性を基に潜水技術を研究し、
また、ノウハウの集積、教育と普及、潜水作業の技法をまとめ、
さらには、潜水を利用した地域振興業務を行うプロジェクト、
「亜寒帯潜水技術研究所」があります。
昨年のプロジェクト発足から見ると、さらなる進展があります。
その中で、私が担当しているのが、
・潜水士資格関連
・潜水作業の安全衛生教育(基礎技術)
・社内マテリアルの作成 です。
ちなみに、セーフティエキップメントとして、
水中トランシーバー「Logosease」の普及と講習も行なっています。
レジャーとは違い、あくまでも業務としての潜水ではありますが、
これは、夢があり、感動もおぼえる、素晴らしい業務だと感じている次第です。
さて、今回のテーマでもある、
潜水作業の安全衛生教育。
常時、潜水業務を行なっている潜水業者は、社内で安全衛生教育を行えますが、
年に数回ほどの潜水業務を行う場合は、なかなかそうもいかないのが現状です。
ここ数年、消防隊員向けの安全衛生教育のほか、
年数回の潜水業務をされている法人の講習も、ご依頼が増えてまいりました。
安全衛生教育 講義です |
潜水業務の導入に関し言えること、
それは、どなたも最初は「初心者」ということです。
サーチとレスキューのプロである保安庁や消防に関しても、
また、自衛隊やU.S.NAVYも、一般ダイバーと同じく、
最初は真っ新な「初心者」なのです。
潜水の安全衛生教育を行うにしても、
まずは、潜水自体を知ることから始めなければなりません。
そこで、NAUIのダイビング講習(スクーバダイバーコース)です。
どんな方でも、最初は一律「初心者」ですから、
教育方針、カリキュラム、教材、保険が揃い、わかりやすい、
一般的なダイビング認定コースが薦められます。
スクール選びに関し、一つだけ選択するポイントがあります。
それは、ライセンスとサーティフィケーションの違いを、
正しく伝えているかどうかです。
実技講習、フィンワーク |
フロッグキック訓練 |
どういう意味なのでしょうか?
それは、、、
ライセンス=許可証(免許証)
サーティフィケーション=証明書(トレーニング修了証明)
この違いが重要なのです。
一般的に、スクーバダイビングのCカードは、
ライセンスと言われてしまいがちです。
しかしながら、許可証ではありません。
CカードのCは、Certification Card の頭文字で、
認証や認定という意味であり、トレーニングを行い、
ダイバーとして必要な知識・技術・安全に対する姿勢を
身につけたことを認めるもの、なのでダイバー証明書なのです。
と、いうことで、インストラクターや指導機関は、
ダイビングを行うことを許可することはできません。
インストラクターが潜水許可を出すなんて、法的にありえません。
ダイバーとして一定の基準を満たしたことを証明するだけなのです。
ここを履き違えると、インストラクション、参加者のモチベーションに、
多大な影響が生じてしまうと考えています。
「お金払ったら、さらっと潜って、免許あげるよ。」
と、いうことになったら、最悪です。
そんなインストラクターはいないものと信じておりますけど。。
バディチェック |
マスク脱着 |
マスク脱着 |
ダイバー認定を受けて、潜水の下地が出来上がったら、
次の関門は、「潜水士免許」の取得です。
こちらは、労働安全衛生法 高気圧作業安全衛生規則に、
「事業者は、潜水士免許を受けたものでなければ、潜水業務に就かせてはならない」
と、規定されています。
したがって、潜水士は、免許、許可証なので、
これこそ潜水業務に対する「ライセンス」ということになります。
潜水業務に就くにあたり、事業者も、潜水士も、
知っておかなければならないこと、
守らなければならないルールがあるのです。
しかしながら、潜水士試験は、筆記試験のみです。
潜水業務の技法、関わる器材は多様であり、
それに加え、潜水を行う環境もまた様々です。
では、潜水技術の訓練などはどのようにするのか?
それは、事業者の義務として、
様々な教育を事業場内で実施しなければならないのです。
潜降練習 |
トリム訓練 |
労働災害を防止するため、事業者が行う法的義務がある教育は、
安全衛生教育と言われており、基本的には、
・雇い入れ時の教育、配置換えの際の教育
・作業内容変更時の教育
・特別の教育
・職長等の教育
があり、送気式潜水方式であれば、送気員は特別の教育が必要です。
しかしながら、潜水業務自体は、特殊な業務ではありますが、
特別の教育(危険有害業務)に指定されていません。
潜水を行なっているかたなら、おわかりいただけると思います。
安全な潜水は、教育と継続的な訓練、基礎の反復訓練が必要ですね?
事業者の考え方に関わりますが、自主的に、潜水のための安全衛生教育を、
かつ、定期的に実施することが、作業場での事故予防に繋がるはずです。
実地訓練 |
低視界 |
障害物もあった |
浅瀬で見たエゾアカガエルのおたまじゃくし |
潜水士試験対策は、様々な形で行われております。
弊社でも実施しておりますし、ネット上でも色々書かれています。
しかし、実技の無い潜水士試験。
そのあとの潜水技術の講習、継続的な安全衛生教育まで、
一括して行なっている個人またはサービス、企業は少ないものです。
ポセイドン、亜寒帯潜水技術研究所は、
その矛盾を考え、トータル的に関わることができるように、
日々、業務にあたっている次第です。
天気は良好 |
見えない世界 |
ライトはマストアイテム |
ウチダザリガニ |
ロゴシーズの着用 |
低視界ではロゴシーズは有効アイテム |
安全衛生教育講習は、
一回で終了というわけにはいきません。
現場慣れでなんとかなるものでもありません。
潜水業務中の事故は、無くなるものではありません。
しかしながら、事故事例から学び、
目標を事故ゼロとすることは、大切なことです。
お時間があるときに、こちらもご覧ください。
厚生労働省の「職場のあんぜんサイト:労働災害事故事例」
ここで、キーワードを「潜水」とすると、
様々な労働災害事故事例を見ることができます。
慣れ、だれ、崩れや、不慣れなど、
様々な事故原因があると考えられますが、
加齢によるものも、これからは考えなければなりません。
今まで出来たことが出来なくなる。
勘違いを長くしていた。
新しい情報を知らない。
ということも含め、
基礎を定期的かつ反復して行うことが、
一般ダイバーにも、作業ダイバーにも、
本当に必要なことなのです。
ぜひ、継続的な潜水作業の安全衛生教育を、
年次行事の中に組み込んでください。
※今回の安全衛生教育講習(2日間)
学科教育
1潜水業務の危険性
2潜水器材の取り扱い方法
3潜水業務の手順
4作業開始時の点検
5当該業務の疾病と予防
6整理整頓、清潔の保持
7事故時等における応急措置と手順
8当該業務に必要な事項
実技教育
静水域指導(プール基礎技術)
現場実地潜水(低視界潜水、淡水、高所潜水)
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